入れ歯は、事故や病気などによって歯を失ってしまった方にとって、とても優れた代替手段のひとつです。
けれど、入れ歯には様々な色・かたち・材料があり、種類も豊富なため、どの入れ歯を選んだらよいのか悩んでしまう方も少なくありません。
当院では、入れ歯の製作をお考えの患者さまにとって、経済的で使い勝手が良く、審美性のある入れ歯を製作するため、患者さまとじっくりと話し合い、お口にピッタリと合う快適な入れ歯づくりを心がけています。
入れ歯の種類
当院では、「金属床」「ノンクラスプデンチャー」「保険適応の入れ歯(レジン床)」の3種類の入れ歯の製作を行っています。よく、患者さまより「保険適応と適応外ではどう違うのか」といったご質問をされることがあります。
保険適応の入れ歯と保健適応外の入れ歯の違いは、
- 価格
- 使用している素材
- 入れ歯を製作する際にかける手間
- 細やかな部分までしっかりと作り込まれた丁寧な仕上がり
この4つになります。
「毎日使うものだし、定期的に作りかえる必要があるものだから」と、比較的安価に作れる保険適応の入れ歯をご希望される患者さまもたくさんいますが、毎日使うものだからこそ、「価格だけ」で選ぶのではなく、着け心地や審美性、耐久性などにこだわり、日常生活を快適に過ごすことが入れ歯を選ぶポイントとなります。
金属床
金属床とは、入れ歯の主要部分であり、お口の粘膜に触れる部分「床 (しょう)」が、コバルトクロムなどの金属を使って作られる義歯のことです。保険が適用されるレジン床の入れ歯とは違い、薄くて頑丈な金属素材を使っていますので、長時間装着していてもたわむことがなく、快適で丈夫な入れ歯を作ることができます。
金属床の入れ歯を作る際、気になるのが「金属アレルギー」です。
現在では、チタン合金や純チタン、貴金属などを素材とする金属床の入れ歯が主流となっており、金属アレルギーのリスクが少なくなっています。しかし、どんなに金属アレルギーのリスクの低い金属とはいえ、患者さまのなかには、まれに金属アレルギーを引き起こしてしまう方もおりますので、金属床の入れ歯をご希望の方は、事前に必ずアレルギーテストを受けるようにしましょう。
金属床のメリット
- 丈夫で壊れにくい
- 保険適用の入れ歯と比べ、薄くて軽い
- しゃべりにくさ、違和感などを軽減できる
- 優れた熱伝導性を持っているため、食事や飲み物の温度がはっきりと分かる
- 健康な歯や歯茎へのダメージが少ない
- 汚れが付着しにくく、清潔さを保ちやすい
- ノンクラスプデンチャーと組み合わせることで、機能性と審美性を兼ね揃えた入れ歯になる
- 細やかな調整がしやすい素材なので、自分のお口にピッタリと合う入れ歯を作ることができる
- 保険適用外の金属素材を使用することで、違和感が出にくい薄めの入れ歯を作ることができる
金属床のデメリット
- 丈夫な素材のため、破損してしまうと修理が難しい
- 患者さまの体質、使用する金属素材によって、金属アレルギーを引き起こすことがある
- 金属床のみで製作してしまうと、やや審美性に欠ける
- 保険適用外なので、製作費用が高い
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーとは、入れ歯を固定するための留め具「クラスプ」が無い義歯のことです。
「クラスプが無いと、入れ歯が安定しないのではないか」と気になっている患者さまもたくさんいると思いますが、ノンクラスプデンチャーは、歯茎を覆う義歯床の範囲が広いため、スクラブが無くても、しっかりと入れ歯を固定することができるように設計されていますので、安心して装着することができます。
ノンクラスプデンチャーは、機能性と審美性を兼ね揃えた入れ歯なので、まわりに入れ歯を装着していることを気付かれる心配がほとんどありません。また、外出先で入れ歯が外れてしまったり、ずれてしまったりすることがほとんど無く、残っている健康な歯へのダメージも軽減させることができるため、まわりに気をつかうことなく、生活することができます。
ノンクラスプデンチャーのメリット
- 樹脂の弾力性を活かして装着するため、しっかりと歯に固定するための金具やバネが無い
- 歯茎の色に近い樹脂を使用しているため、入れ歯を装着していることをまわりに知られにくい
- 優れた弾力性を持つ素材を使っているので、壊れにくい
- 薄くて軽く、食べ物が挟まりにくい
- お口の粘膜にピッタリ吸い付くかたちで装着されるため、違和感がほとんどない
- 金属を使用していないため、金属アレルギーの心配がない
- 素材の弾力性によって、かみ合わせによる健康な歯へのダメージを和らげてくれる
- クラスプが無いので、健康な歯や歯茎を傷付ける心配がない
ノンクラスプデンチャーのデメリット
- お口の中の状態によっては、どうしても装着できないケースがある
- 入れ歯の素材となる樹脂の寿命が短いため、2~3年ごとに作り直す必要がある
- 破損しても修理することができないため、再製作しなければならない
- 特殊な樹脂素材で作られていますので、専用の洗浄剤以外でのお手入れができない
- 保険適用外のため、製作費用が高い
保険の入れ歯(レジン床)
保険の入れ歯とは、プラスチック素材「レジン」を使用して製作される義歯のことです。
保険適用内で製作されるため、入れ歯の製作費用を比較的安価に済ませることができ、患者さまの日常生活に支障がでないよう、短期間で入れ歯を作ってくれます。
ただし、保険の入れ歯は、決められた範囲内の素材や製作工程で入れ歯が製作されるため、金属床やノンクラスプデンチャーといった保険適用外の入れ歯と比べると、精密度・適合性・装着時の快適さ・審美性・耐久性などがやや劣ります。
保険の入れ歯メリット
- 保険が適用されるため、比較的安価に入れ歯を製作することができる
- 入れ歯を短期間で製作することができるため、日常生活に支障がでにくい
- レジン (プラスチック素材)のみで作られているので、破損してしまっても修理がしやすい
- 入れ歯の適応範囲が広く、どのような症例であっても使用することが可能
保険の入れ歯デメリット
- お口の粘膜に吸着させて装着するため、安定しにくく、しっかりと噛むことができない
- 入れ歯を安定させるためには、保険適用外のアタッチメントやインプラントなどを併用する必要がある
- 強度を上げるため、全体的に厚みがあり、サイズ感も大きくなるため、装着時の違和感が強くなる
- 熱伝導率が悪くなってしまうため、食事や飲み物の温度が感じにくい
・臭いを吸収してしまう素材のため、毎日お手入れをしていても臭いが染み付いてしまう
当院の入れ歯エピソード
以前、入れ歯の製作をするため、80代のおじいちゃんが来院されました。治療を担当させていただいた私は、おじいちゃんのお口の中を見て、たいへん驚きました。
なんと、おじいちゃんの歯は、ほとんどの歯が虫歯などでボロボロになっており、歯茎で食べ物を噛んでいるような状態まで悪化していたのです。
そこで私は、おじいちゃんに歯が悪くなってしまった経緯を詳しくお聞ききしたところ、ずっと歯医者が嫌いで、1度も入れ歯を入れたことが無いと話してくれました。
歯医者さん嫌いなおじいちゃんが勇気を出して、当院に足を運んでくれたことが、たいへん嬉しく、私は「おじいちゃんのお口にピッタリな入れ歯を作ってあげたい」と思いました。そして、完成した入れ歯をおじいちゃんにはめていただいたところ、痛みや違和感もなく着け心地がとっても良いと、すごく喜んでおられました。その姿を見たとき、私は「歯科医師冥利に尽きる」と思いました。
歯科治療の方法は患者さま自身で自由に選択や変更を行うことができます。しかし、患者さまの選択肢となる歯科治療の引き出しを広げることができるのは、私たち歯科医師になります。当院では、常に患者さまが最良の歯科治療を選択できるよう、じっくりと話を聞き、分かりやすく丁寧な説明を心がけています。
入れ歯の調整・修理・再製作について
入れ歯は消耗品ですので、こまめに作り直さなければなりません。
当院では、入れ歯を製作された患者さまが、後々に後悔しないよう、製作前にしっかりと患者さまと話し合ったうえで、入れ歯の製作を行っております。また、患者さまのお手元に入れ歯が届いた後も、調節・修理・再製作のご相談も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
入れ歯の調整
保険適用内の入れ歯をご希望された患者さまの場合、必要最低限の原状回復を目的とする入れ歯の製作となりますので、型取りやかみ合わせの確認に時間を割くことはできませんが、しっかりと噛めるようになるまで、装着後に2~3回の調整をさせていただいております。
保険適用外の入れ歯をご希望された患者さまは、精密な型取りやかみ合わせなどの確認を行ったうえで、入れ歯の製作を始めるため、装着後の微調整の回数が、保険適用内の入れ歯と比べて、少なくなります。
入れ歯の修理
保険適用内で製作された入れ歯は、修理しやすい素材で作られているため、破損の程度にもよりますが、基本的には修理当日に入れ歯をお返しすることができます。
しかし、保険適用外の入れ歯の場合、素材の特性上、修理が難しいため、破損の程度によっては、修理当日すぐに入れ歯をお返しすることができず、お預かりになってしまうことがあります。保険適用外の入れ歯を修理される際は、入れ歯を修理に出しているあいだの対処法などを、歯医者さんとよく相談してから修理を行ってもらうようにしましょう。
入れ歯の再製作
入れ歯を製作される患者さまの多くが、保険が適用される保険の入れ歯を選択されることが多いのですが、装着時に違和感や痛みが出やすく、フィット感も無いため、作り直しをご希望される患者さまもいます。
しかし、保険診療でもう1度、新しく入れ歯を作る場合、前回入れ歯を製作した時点より6ヶ月経過しないと新しい入れ歯を作ることができないという健康保険の決まりになっており、6ヶ月間は合わない入れ歯を装着して過ごすことになってしまいます。
ただし、6ヶ月以内に保険適用の入れ歯を作った場合でも、入れ歯が破損してしまったときの修理やかみ合わせが合わないなどの調整は、保険診療が可能となりますので、再製作を希望する前に1度、歯科医院で入れ歯を診てもらうことをおすすめします。
入れ歯に関するご相談は当院まで
入れ歯を作る際にもっとも大切なことは、しっかりと噛みしめても痛みや違和感のない入れ歯を作ることです。
当院では、これから入れ歯を作ろうとお考えの方、入れ歯が合わずお困りの方など、入れ歯に関する様々なお悩みや不安、心配ごとを抱えている方からのご相談をたくさんいただいております。どんな些細なことでも気になる点がございましたら、遠慮なくご相談ください。